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植藤造園
ウエトウの植木屋仕事
2013.5.1

暮らすところを創る ① 土壌


「庭」という雑誌の「隨縁放談」という連載記事で、会長が取材を受けております。
今月号の記事では、写真の現場仕事でのお話しが掲載されています。
(※庭2013-5no.211 建築資料研究社出版)
3月の末に開園式が行われたのですが、そこまで辿り着くための道のりは、大変長いものでした。
雑誌に掲載されたこともあるので、今月のブログは、この工事の紹介をしたいと思います。
さて。
このお仕事が始まった頃、会長がよく口にする言葉がありました。
「暮らすとこをつくるんや」



これが、工事が始まる前の現場状況です。所謂、工事現場。何もない状態です。
上の写真と同じ場所だとは、思えません。
この仕事は、広島の開発地域における緑化工事でした。
山を切り崩し、住宅が密集し、広島駅まで30分。広島の新たなベッドタウンとなる場所です。
( 関連ブログ 『野点石張り工事①』『野点石張り工事②』『あけましておめでとうございます』
私は、会長が出張へ行かれるたびに、撮ってきた写真の整理をしていました。
その時は正直、何をされているのかイマイチ分かっておりませんでした。
しかし仕事が終わると、点と点が結ばれ線になり、描いていたものが何なのか分かるように、
「ああ、こういうことをされていたのか」
と感じるから不思議なものです。

会長は最初に、山へ土を確認しに行きました。
公園を創るには、緑化を行うには、基盤となる土が大変重要です。
会長は土の話をするときに、こんな例え話をしていました。
「産まれたての赤ん坊が、一人で生きていけるかいな。死んでまうやろ。
世話してくれる母親や父親がおって、家があって、衣食住の基本がある。
そういう基本的な、基礎というものがあるから生きていけるんや。」
植物にとっての基本が土となる、ということを人間に例えて話したのです。
会長は、いつも、人に例えて話をします。そうすると、
ああ、そんな感じか。と思えます。
さて。造園に携わる方は土のこと御存知でしょうが、そうでない方はいかがでしょうか?
私は、造園会社に勤めるまで、土がどんなものか、全く理解していませんでした。
土の中では様々な生物が生きています。バクテリアから菌類、昆虫、動物。
それらの生物がそこで営みを行っているために、植物は成長できます。
それらの生物が営みを行っていないということは、そこは砂漠となります。
「良い土壌」は植物にとって、私たち人間の「衣食住」にあたるのですね。
この土壌をつくるために、会長は山へ土を確認しに行ったのです。


そうして、植栽に適した土が現場に運びこまれました。
一言に、植栽に適した土と言っても、土にも色々な種類があります。
そして、その土を好む、又はその土であれば生きることが出来る植物があります。
会長はこの場所を創る際に、どんな場所にするか、―――つまり、
そこで人がどんな風に生活を営むか、どのような文化が生まれるか考え、
それを創る為にはどんな植栽をするか、どんな空間とするか、
とイメージし、その植栽にあった土にするために、山へ最良の土を探しに行ったのです。
私たちが何気なく踏んでいる土には様々な営みが行われています。
土が営みを行っているから、私たちも暮らせているのですね。
「母なる大地」という言葉があります。
土は植物にとって、そして私たち人間を含む全ての生物にとって、
母のような存在なのかもしれません。
「暮らすとこをつくるんや」
という会長の言葉はとても短い言葉でしたが、多くの意味が含まれていました。
「暮らす」ということは何なのか。
現代の私たちの生活は、果たして「暮らしている」と言えるのか。
私たち一人ひとりが丁寧に、考えて模索すべきテーマだと感じています。
(株)植藤造園 設計 ブログ担当者

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