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植藤造園
ウエトウの植木屋仕事
2013.5.14

暮らすところをつくる③ 石材選出

「石を選びにいかなあかん」
竹林の植栽が終わり、出張から戻って間もなく。
会長は次の段取りの事を考えておりました。
前々から 「石は和泉で選べばええんや」 とよく話していました。
和泉さんとは会長が25歳の時、パリでイサムノグチと仕事をしてからのお付き合いとなります。

「竹の中からスッとした石を入れて、空間に間を創る。」 ために、会長は石を選びに行きました。
( 関連ブログ 『暮らすところを創る ① 土壌』『暮らすところを創る ② 植栽』 )
会長は自身が運転する車で、まず一度現場へ行き確認をし、石屋へと向かいました。
京都 ― 広島 ― 香川 という長距離運転。お一人でされるから驚異です。
さて。石屋に着くと会長は和泉さんに、どんな石が欲しいのかを伝えました。
「そういうものがあるは、あそこかな」と、和泉さんに石置き場へ連れて行ってもらい、
大量に石が積まれている中から、ものの20分もかけずに4石を選びました。

石を選び次第、京都へ戻り、会長はイメージを私に伝えます。
「これとあの石を組み合わせて、ここら辺に据える。
波みたいになぁ、カズラとそのへんの石を組み合わせればええんや。
この石には後ろに梅をガツっと組み合わせるんや。」
絵を描いている間は、会長は何も言いません。
私が「こんなでいいのだろうか」と疑問が湧いて聞いた時、初めて答えます。
そして、「あとはお前の好きなようにせい」 と言って畑仕事へ出て行かれました。
このお仕事は広島のお施主様が、野点石張り工事を気に入って下さったことから、
継いで依頼して下さったお仕事でした。
なので、私は「前回と同じ石材を使用しよう。」
「『波』の水面のようなイメージが石の使い方に出ればいいのかな。」
と考え、あとは自分の好きに描きました。
( 関連ブログ 『野点石張り工事①』『野点石張り工事②』『あけましておめでとうございます』

そうして、この絵を会長に「これでいいですか?」と、渡すと、、、
「はっはぁ!こりゃ大変やで!
(石張り部分を指して)この辺はこういうつもりじゃなかったんやけど。
ここまで出来ればえぇけどなぁ!まぁええわ。
まぁ、ここまで出来んと思うけど、とりあえず持っていくわ」
と、絵と石の写真を持って広島へ行かれました。
(私としてはその言葉に、手に汗を握る思いだったのですが。。。)
絵をみた西広島開発の社長さんは 「これつくって」 と仰ったそうです。
戻ってこられた会長は私に
「お前があんな絵を描いたお陰で、現場のもんが大変やでー」
と笑い、担当の職人と打ち合わせ、準備を始めました。
会長は和泉さんのところで選んだ景石を、据えつけに行かれました。

現場では勿論、絵通りになりません。
石の表情と、現場の空気、空間性が一番合う位置を幾度も模索したと、聞きました。
広島の業者の方が 「会長は妥協せぇへん」 と仰った一言が印象的でした。
どの石も、品格ある美しい石だったので、組み合わせるのが勿体なかったのかもしれません。
様々な理由が加わり、会長は結局、石をそれぞれ独立させて据え付けました。

私は。現場に呼ばれ、再度絵を描くこととなりました。
この時、私の中では一つの線が結ばれました。
会長はきっとこういう空間をイメージしていたのだろう、と
それまで半分模索しながらだった絵の輪郭が、ほんのりと見えてきました。
そうして、次の石材を準備する間に、イメージスケッチをお客様にお渡ししました。

(株)植藤造園 設計 ブログ担当者

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