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植藤造園
桜シリーズ
2013.6.15

大龍桜

今年の春、見事な新種が咲きました。
下の写真の佐野桜の新種となります。
元々、佐野桜は先代が広沢の池で、山桜の実生から見つけた新種です。
(※実生(みしょう)=種から育っている樹木のこと。対して、同品種を栽培する「接ぎ木」がある。)
会長からブログにこのまま書いたらどうや、とお達しがあったので、
会長の文書を、抜粋して掲載させて頂きます。

「平成25年3月25日とある会食の席で、相国寺に桜を植えたいとの話があり、
大龍桜と名付けて、相国の桜として残していきたいとの事。
はたして、それにふさわしい花があるかと、その場では返答出来ず、
困り果て、約3週間考えあぐね、苗圃の桜畑の実生苗の花の咲くのを待ちかね、
約1万本近くの各種類の花を調べ、やっと、目に止まったのが、佐野桜の実生の花である。
昭和初期に父が発見し、山桜の突然変異であるこの桜が、
約80年の年月を経て、又この様な花に変異し、見事な花を咲かせたのである。
その時に話があり、これも何か父の魂を佛縁で引き継がれた思いである。
又、大龍という名を付けて頂けるのも、幸せである。」

こちらがその桜です。
見事な大輪で八重の桜色が美しい花です。
写真で見るだけでも全く違う花であると感じられます。
「紅八重大島かなんかが混ざったみたいなかんじやな。
何が混ざっとるんかはわからんが、これだから実生が一番ええ。」
実生の花は、鳥や昆虫が違う花の花粉を運び込むことで、交雑していきます。
そうして、巡り合った花粉を雌蕊が受け入れて、新たな品種の桜が生まれます。
「それを人工でやっている所もあるけど、自然が一番ええんや。」
と会長は言います。
「交雑しちゃあかん種類は違う時期に咲くんや。梅が咲いて、コブシの次に桜が咲く。
あいつらは混ざりたくないから違う時期に咲いとる。
でも、同じ梅同士や桜同士は混ざってええんや。
混ざってええから新しい種類がわりと見つかりやすい。
逆に同時期に咲くやつは、絶対に交雑しない奴だったりもする。梨とかリンゴとかなぁ。
あいつらは混ざりたくないから他を受け付んように出来とるんや。
それを今、無理矢理に品種改良とか言うて、変な新しいもんばっかり作っとる。
梨とリンゴからしたら、余計なお世話ゆうことやで。
お前かて相性の合わん奴と飯食え言われても、嫌やろ。そういうこっちゃ。」
会長の話は、一つの話をしているようで、全ての話をしているように感じます。
この話の前に私たちは、世界の宗教と仏教、日本の宗教に関する話をしていました。
気づいたら種の交雑に関する話になっていました。なので私は、
「つまりリンゴはユダヤ教で梨はイスラムだから混ざりたくないのですね。
桜は仏教で宗派がいろいろ出来るということですか。」
と冗談を交わせば、「そういうこっちゃ」 とのこと。
植物と宗教の話は別として、桜は現在、200~300種類と言われているようです。
しかし、日本人がみんな同じ人かというと、そうでないように、桜もそれぞれです。
接木で育てた桜は同種と言って良いでしょうが、実生の桜はそれぞれです。
同じ親から生まれた兄弟が、全く違う人物像になるが、根本の共通点はある。
それと同じなのでしょう。
どうやらそういう風に、「新種」にふさわしい桜が、たまたま弊社の苗圃で見つかったわけです。

(散り際の大龍桜。だんだんと桜色が抜けていく)
大龍桜。
これから暑い夏ですが、今からこの桜がお嫁に行く日が、楽しみです。
(株)植藤造園 設計 ブログ担当者

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