彼岸があけ、京都はぐっと朝晩が涼しくなりました。
みなさま いかがお過ごしでしょうか?
京都の北山台杉は有名かと存じますが、先日、改めてその美しさに感動しました。
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「枝打ち」という言葉をご存知でしょうか。
ハサミではなく、読んで字のごとく、カマで枝を打ち、姿を整える技法です。
ダイスギの枝打ちは京都独特の剪定方法です。
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ここ数日、園内で職人がダイスギの枝打ちを行っていました。
何度見ても、見事な手捌きに感動します。
職人はとても素早く鎌を動かします。
風を切る音と衣擦れの音、葉がパラリと落ちる音。
梯子のかけ方も独特で、遠目には梯子に乗ってないように見え、全てが軽やかでした。
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ところでダイスギとは品種名称ではありません。
北山杉のことを指しますが、この「北山杉」とは京都北部を産地とする杉のことです。
読まれた方も多いと思いますが、この北山杉について川端康成の「古都」で
鮮やかに描写されております。
特に手入れをしてなければ普通のスギです。
もさもさと葉が繁茂し、私たちが子供の頃からイメージする、いかにもな姿をしています。
下の写真は、枝打ちを行ってから随分経っているダイスギですが、
まるでフィンセント・ヴァン・ゴッホの糸杉のようですね。
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しかし、職人が枝打ちを行えば、とても涼やかな姿になります。
ゴッホの情熱的で感情的な厚塗りの絵が、
長谷川等伯の凛とした静かな絵に変わったようになります。
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青空を背景に、葉の一本一本が、日本画の美しい線のように浮かび上がります。
芯の強い木なので幹が大きく揺れることはありません。
風が吹けば 葉がさわさわと涼しげにゆれます。
室内にいても、風を鮮やかに感じることが出来ます。
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お恥ずかしながら、私は京都にくるまで、ダイスギの存在を知りませんでした。
また初めて見た時は、特徴的な木であるために使うのは、とても難しいとも感じました。
しかし私はいま、この樹がとても好きです。
一年中青々としていて、涼やかな凛とした姿に胸を打たれます。
また職人の技術が鮮やかに、浮かび上がる樹でもあります。
いかにも「日本らしい」線を描き、景を綾どるダイスギ。
ゴッホと等伯とに例えましたが、私はこのダイスギにとても「日本」を感じます。
昔 会長が「日本人は道場的な考えをする」と話されていた根源を
「基」を、そこから派生する流れを、なんとなく感じます。
道場
静かで凛としたもの
等伯の絵、日本画
緊張感
職人の作業・技術
ダイスギの枝打ち
きっと全てが繋がるのだろうと、秋風に感じました。
(株)植藤造園 設計 ブログ担当者